ストーリー
1970年代後半、東京から2時間ほどの街にある「ナミヤ雑貨店」の店主が、雑貨店に集まる子供相手に悩み相談を行うようになった。子供相手だから、とんちまがいの回答で許されるゆるいものだったが、つれあいを無くして元気のなくなった老店主を元気にするには十分なものだった。店主は子供相手にも一生懸命と考えて回答していた。やがて、真剣な相談にも乗るようになった。が、ある日、悩み相談に応じた女性が、自殺したという記事が地元の新聞に載ったのを目にしてしまう。果たして、自分が行ってきた悩み相談が本当に相談相手の役に立つものだったのか、老店主の心を悩ませる。
その老店主が亡くなって数十年後、住人を失ったナミヤ雑貨店に3人の若者が迷い込む。そこから不思議なストーリーが展開する。
書評
実はこの本は、初め2章ほど読んでページを閉じてしまった。1章、2章で展開する悩み相談のエピソードに十分お腹いっぱいになってしまったのと、展開がSFチックなものだったからだ。再びページを開いたのは、劇場版「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を観たからだ。それも「新型コロナウイルスの影響で外出自粛なので、映画でも観るか」という消極的な理由だった。「リボーン」を歌う門脇麦を観たいなという程度のものだった。それだけ、期待値は高くなかったのだ。
しかし、映画は、文庫本で400ページを超えるボリュームのストーリーを損なうことなく、いや、損なうどこらか小説以上にミステリーな部分をうまくまとめていて、飽きることなく楽しく観ることができた。
映画を見てから、あわてて、放り投げた文庫本を探して読み直した。すると、映画では描ききれなかったのではないかと思われる「悩み相談」、大袈裟に言えば「人生」ってなんだろうという部分も読み取れ、大きな満足感を得られた。僕の中では、ミステリー作家の枠を飛び越えた東野圭吾の最高傑作の1つになった。
個人的には、まず映画を観る、そして小説を読むという順番をお勧めしたい。
ナミヤ雑貨店の奇蹟
私のおすすめ度 ★★★★★