ストーリー
主人公は、妻子ある典型的な中間管理職。不倫なんてとんでもないと思っていたのに、ある日、会社にやってきた独身の派遣社員と恋に落ちる。しかし、その恋の相手は、過去に大きな闇を抱えていた。高校生の頃、父親の不倫相手を殺してしまったという疑いを持たれていた。恋に落ちた主人公は、心揺れながらも不倫相手の無実を信じ続けるのだが……。
書評
一夫一婦制を敷いている国ならば、不倫は永遠のテーマで、様々な小説が書き上げられている。もちろんミステリー小説にもありふれたものだ。それがもとで殺人事件が起きることは、小説の世界なら日常茶飯事。現実の世界でもよくあることで珍しくない。だからこそ小説の世界に簡単に入り込めるような気がする。自分がどの登場人物に近いかでストーリーの見え方も大きく変わってくるのではないだろう。
子供をも捨てて新しい恋に走ったことがある人も、あるいは、不幸な結末を迎えてしまった人も、はたまた、不倫と決別した人も、「それは違うだろう」などと心で叫びながらも、それぞれに楽しめるのではないだろうか。禁断の恋は蜜の味であり、そんな恋の思い出は大きな余韻を残すもの。東野ミステリーらしい、読後の余韻が楽しめる一冊だと思う。
ヒロインが殺人者なのかどうか、この恋の行方とともに、中盤以降、事件の謎解きも十分に楽しめる。
夜明けの街で
私のおすすめ度 ★★★★☆