蓮池薫「拉致と決断」

北朝鮮拉致事件が、ようやく大きく動こうとしているが、蓮池透氏の「奪還ー引き裂かれた二十四年」に続き、拉致された本人が2012年に書いた「拉致と決断」を読んだ。


この本を読んで、
1)北朝鮮はいったい何のための彼らを拉致したのだろうか。
2)北朝鮮の人々はやっぱり困窮している。
3)子どもを人質に取られて、帰国の決断をされた勇気。
という3つのことが心に残った。

1)まったくもって不可解だ。蓮池さんは翻訳をしていたというが、拉致までしてさせる作業だろうか? 日本から金を引き出すための人質だったんだろうか?

2)欲しがりません勝つまでは。という言葉が、戦前の日本にあったが、今の北朝鮮は、まったくもってその頃の日本と同じではないかと感じた。北朝鮮に暮らす一般市民は、ただただ被害者。憎むべきは北朝鮮という国家ではなく、長年、独裁政治を続ける一握りのトップたちなのだ。言論の自由が認められつつも、国民感情に流されて、日本へと厳しい姿勢を続ける、韓国政府とはまったく逆だ。
優先すべきは、疲弊する北朝鮮の人々に、なんとか安心できる生活を送れるよう隣国として協力することではないだろうか。もちろん、韓国との間でおかした失敗を繰り返さないことが大前提だ。韓国へ多額の援助をしながらも、今、こんなに嫌われていることを考えると、国と国とのつながりを強めるためには、政府間の援助よりも、草の根での絆こそが大切ではないかと思う。遠く離れたトルコの人たちが、日本を愛してくれているような、そんな信頼関係作りこそが求められる。
拉致事件が解決された暁には、拉致された被害者の皆さんこそが、これからの北朝鮮と日本を結ぶ大切なキーマンなのではないかと強く感じられた。

3)どういう交渉だったのかわからないが、日本政府が蓮池さんとの約束を果たし、お子さんたちを帰国させたこと、これが何よりも良かった。今回の北朝鮮との交渉も成功することを祈るばかりである。

私のおすすめ度:★★★★★