北斎と一茶、そして正則の岩松院

 葛飾北斎の天井絵で有名な小布施の岩松院を訪ねた。
▲小布施の岩松院

▲小布施の岩松院

 かねてから行こうと思っていたが、小布施のようなおしゃれな観光地は苦手だという先入観があって、なかなか小布施には足が向かなかった。でも、北斎がその絵を90歳目前で、しかも江戸からわざわざやってきて小布施で描いたことを知って、どうしても見てみたくなった。

 絵がすごいのは当然だが、何に突き動かされたかというと、85歳ぐらいの時に、小布施までやってきた北斎の驚異の体力だ。当時もちろんクルマも新幹線もない。驚くばかり。超超スーパーじいさんだ。

 さらに、岩松院には「やせ蛙負けるな一茶これにあり」の句を詠んだ池がある。長野に越して来て5年になるが、一茶が信濃町の出身だということを、岩松院のことを調べていて初めて知った。そして、一茶が50歳を超えてから若い嫁さんをもらい、子づくりをし、しかも64歳で没するまで3度も結婚していることも知った。この寺に関わるスーパーじいさんでは、北斎だけではなかった。
 53歳の私にとって、二人とも希望の星。それを知って、ますます岩松院を訪ねてみたくなった。

 さて、岩松院だが、ここにはもう一人歴史的著名人、そしてスーパーじさんが関わっている。
 それが福島正則。戦国武将で、秀吉の重臣、賤ヶ岳七本槍の一人だ。福島正則は49万8000石の広島城主だったが、武家諸法度を破ったと幕府に叱責され、たった4万5000石のこの地へ国替えになってしまった。元秀吉の重臣とは言え、徳川にも尽くしてきた。晩年になってからのこの仕打ち、無念だったはずである。しかし、この地に来て、腐ってしまうこと無く、地域の発展に尽力したらしい。国替えされたのが、60歳の頃。人生50年の時代だから、この人もスーパーじいさんだ。

 そんなスーパーじいさん達にパワーをもらおうと、岩松院を訪ねた。

 先日は旧北国街道を走ったので、今日はもうちょっと山際を走る北信濃フルーツ街道を走った。りんご畑、ぶどう畑が両側に広がる、まさにフルーツ街道。高台を走る区間もあるので、善光寺平、そしてその向こうに北アルプスや北信五岳の稜線がきれいに見える。この日は残念ながら、黄砂なのか、稜線がかすんでしまっていた。

 しかし、天気はいい。フルーツ街道を走る気持ちよさで、果樹園が途切れ、田園地帯になる中野まで来てしまった。なので、久々にぽんぽこの湯へ。高台のぽんぽこの湯は眺望抜群、桜の時期だと、なおさら美しい。
▲ぽんぽこの湯からの眺め。眼下に中野市街、その後ろに北信五岳を望む

▲ぽんぽこの湯からの眺め。眼下に中野市街、その後ろに北信五岳を望む

 湯の後に、いよいよ岩松院へ。
 
 山際に建つ建物は、期待が大きかっただけにこぢんまりと感じた。仁王門、鐘楼があるものの、どこにでもあるような寺という感じ。拝観料300円を払って本堂へ。ご本尊が収まる部屋の天井に北斎の天井がはあった。レプリカではない本物が! 160年以上を経ているが色あせることもなく迫力を持って、拝観者を見下ろしている。
▲田んぼに囲まれた静かな場所に建つ

▲田んぼに囲まれた静かな場所に建つ

 平日ということもあり、拝観者は私以外1組だけ。ゆっくり、静かに眺めることができた。ちなみに、岩松院は曹洞宗のお寺で、ご本尊は釈迦牟尼仏だ。
 
 本堂に続き、福島正則の霊廟にお参りし、一茶が句を詠んだ本堂裏手の池(蛙合戦の池)を見学した。
▲本堂裏手の墓地の真ん中に霊廟はある

▲本堂裏手の墓地の真ん中に霊廟はある

▲蛙合戦の池と呼ばれる池で有名な句は生まれた。我が子の病気を思い読んだ句だとか

▲蛙合戦の池と呼ばれる池で有名な句は生まれた。我が子の病気を思い読んだ句だとか

 北斎の足跡に触れると、もう少し、北斎のことが知りたくなる。そこで、北斎館へ向かったが、なななんと、増床のための改築中で4月3日まで旧館中だった。それではと高山村の一茶館へ。

 一茶館は、この村にしたは風変わりな外観で、いつも気にはなっていたが、素通りしていた。ここも訪問客は私一人。入館すると展示場の照明がともった。

 一茶は信濃町の人だが、15歳の時、江戸へ奉公に出る。奉公と行っても勤め先は定まっていなかったようだ。そんな中で俳句に触れ、頭角を現し、江戸一番の俳人と評されるようになる。そして、アラフォーになると故郷に足が向くようになる。51歳にして信濃町に帰り、信州での活動を始める。

 そんな一茶が、47歳の時に高山村の久保田春耕を訪ね、春耕は、一茶のために離れを開放、一茶はたびたびここに逗留するようになった。そのため、高山村は一茶ゆかりの地なのだ。

 一茶館には、一茶が逗留した離れがそのまま移築されていて、中にも入れる。一茶の気分になって、まったりできる。館内では映像の展示もあり、一茶の生涯を簡単に知ることができる。これまで温泉ばかりに目がいっていたが、ここも高山村おすすめの観光スポットだ。
▲一茶館

▲一茶館

▲一茶が逗留した久保田家の離れ

▲一茶が逗留した久保田家の離れ

▲座敷に座ってみた。そこで一句、……詠んでみたかった

▲座敷に座ってみた。そこで一句、……詠んでみたかった