ほんとうの環境問題をこの本が教えてくえる!?

池田清彦さんと養老孟司さん共著の「ほんとうの環境問題」という、すばり私の知りたかったことをタイトルにしている本を読みました。

3章構成です。1章で養老さんが、2章で池田さんが、ほんとうの環境問題とは何なのかを論じ、3章でお二人が対談をしています。

特に興味深かったのは、養老さんが書いた1章の「環境についてほんとうに考えるべきこと」でした。
ところどころ、理解できない部分もありますが、私なりに読み解くと、環境問題とは、石油エネルギーによってアメリカが築き上げた文明の行き詰まり(終焉)を意味している。

この約100年は、アメリカが大きな力を付け、台頭していますが、それは何より石油というエネルギーをにぎったからに他ならなかったのです。アメリカばかりでなく、地球の歴史の中で、たぶんこれだけの発展を遂げた時代はなかったでしょう。発展は石油というエネルギーの消費なくしてはあり得なかったのです。

ここらあたりに文明とエントロピー(熱力学の第二法則)とかがでてきて、わかりにくいのですが、文明という秩序だった状態を、石油エネルギーの力によって維持した(高い経済成長を続けてきた)ために、環境問題が発生したということです。

環境問題を考えるために、3つに分けて考える必要があると説明しています。
1)自然環境問題
   自然の正常な状態をきちんと理解し保護すること
2)ゴミ問題(最近、エコと呼ばれる範疇)
   産業廃棄物、エネルギー、暮し方の問題
3)国家安全保障問題

これらが密接にからみあっていて、部分的に論じても解決はみえないということです。
3の国家安全保障問題は、エネルギー問題とも密接にかかわっています。国の成長がエネルギーによってもたらされるわけですから、環境の問題は、海外にエネルギーや食料をたよっている日本にとっては、非常に危険な状況にあるわけです。

かといって、江戸時代のようなつつましやかな生活を送っていれば、やがて、再び諸外国との文明格差を招くのかもしれません。この章では、ではどうするんだという話にはなってませんが、3章で、お二人がブツブツと語り合っています。そのあたりにも面白い内容です。

異論反論いろいろあると思いますが、耳を傾けてみても損はないお話だと思います。

ちなみに、池田清彦さん(1947年生まれ)は、早稲田大学国際教養学部教授、生物学の先生。養老孟司さん〔1937年生まれ)は、東京大学名誉教授、脳科学・解剖学の先生です。養老さんは「バカの壁」という本が2003年にベストセラーになったことや、テレビにも時々出演されているので、名前をご存知の方は多いと思います。専門分野の話ではないと思いますが、お二人とも虫大好きおじさんで、環境にも敏感なのではないでしょうか。