東野圭吾がデビューから2年、1987年の書き下ろし作品です。
■ストーリー
大学の正門の位置が変わってしまったために、寂れてしまった商店街(旧学生街)が舞台。そこの喫茶店兼雀荘兼ビリヤードの店「青木」で働いていた松木がある日部屋で殺されてしまう。その犯人が捕まらないうちに、今度は、同じ店で働く光平の彼女、広美が殺された。主人公は光平、謎の多かった年上の彼女、広美の真実の姿を追いかけるうちに、殺人事件の謎も解き明かしていく。
青木に通う人びと、商店街の人びと、そして事件後登場する広美の妹や元広美の恋人の刑事、広美が週に一度、光平に秘密で通っていた養護施設?のあじさい学園の園長などが、謎の多い人びとが次々と登場して、事件の出口が見えないように思えるが、やがて事件は一本に繋がっていく。
■書評
著者が推理小説に挑戦している作品だと感じます。登場人物が「推理小説ってつまんない……」って語るくだりがありました。それは、きっと著者の思いだと思うんです。これまでどおりの、事件を解決するまでの一辺倒の謎解きではだめなんだって思っていたんではないでしょうか。
なるべく繋がらない連続殺人を引き起こし、最初の謎解きにも難解さを加え、事件以外の部分にも謎な部分を加え、最後にもう一度考えさせる。
この一作は、まだまだ、推理小説の枠に捕われています。そういう意味で著者の才能が開花する前の作品であり、著者の作品の魅力の一部分しか見せてないという意味で、オススメ度は3星です。(5つ星を最高点にしています)
しかし、長めの作品を読みたい時にはおすすめです。登場人物の魅力やちょっと気だるいストーリー展開にまったりと浸れる物語です。いい意味で、先を急いで読みたくなる小説ではないんです。その世界観にずっと浸っていたくなります。