こんな結末があったのか「祈りの幕が下りる時」

ストーリー

 加賀恭一郎シリーズの完結編? 殺人事件を担当する加賀の従兄弟である松宮が、加賀に助言を求めたことから、加賀自身の個人的なストーリーと殺人事件が絡み合っていく。なぜ、日本橋署に加賀が勤務しているのか、加賀の家族のストーリも明らかになっていく。学生時代から始まる、加賀シリーズだが、これは「新参者」「麒麟の翼」と続く日本橋三部作の完結編。加賀全てが明らかになる。まだ、前述の2冊を未読なら、まず、それを読んでから、この1冊を手にしてほしい。

書評

 ミステリー作品だが、その中心には、家族の物語がある。そうした作品は多いように思うが、この作品の特徴は、犯人とされる人々の物語と並行しかつ、それと同列の物語として、事件を解決していく主人公、加賀自身の家族の物語が描かれているところだ。絡み合うことがないと思われる2つの家族の物語が密接に関わっていく。ミステリーというよりも、文学作品として読むにふさわしい、醍醐味もある。もちろんミステリーとしての面白さを十分に持ち合わせている。

祈りの幕が下りる時
私のおすすめ度 ★★★★☆

映画

 2018年1月、映画も公開されている。小説が面白かったので、早々にDVDを借りて鑑賞した。映画版は、映画版として独立した「祈りの幕が下りる時」として楽しめた。特に後半が良かった。個人的な印象だが、「砂の器」を見た時と同じような悲しさに包まれた。大スクリーンで観たくなる映像の作りも良かった。小説とはまた違った感情を持たせてくれるものに仕上がっていたと思う。阿部寛にはもうちょっと頑張って欲しかったが、松嶋菜々子は良かった。欲を言えば、小説ではラストで印象的な役割を担う金森登紀子(田中麗奈)をもっと見たかった。