今までにない最終戦の雰囲気に

 日本代表で活躍した明神選手の引退があったのも大きいが、これまで長くパルセイロを支えた選手たちがごっそりと退団するため、独特の雰囲気の最終戦だったと思う。

 最終戦の対戦相手は熊本。くまモンが来場した。くまモンにも会えて、明神選手の最後のユニホーム姿が見られて、大島キャプテンの涙の挨拶が聞けて、最後の宇野沢選手のチャントも聞けて、そして、アディッショナルタイムでの劇的なゴールでの勝利で5連勝と感動的な時間を過ごすことができた。

くまモン来場

 試合展開は、前半41分に熊本が退場者を出して、人数的な優位もあり、押せ押せで試合を進めたが、あと一歩が決めきれない、今シーズンを象徴するような展開だった。ただ、違ったのは、アディッショナルタイムに点を決められるのではなく、点を決めて勝利をもぎ取った点だ。ようやく横山監督のチーム作りが結実した感じだ。ぜひ来年につながって欲しい。

 そして、怪我によって引退を余儀なくされた新井選手や退団した選手たちにも来年どこかでぜひとも活躍して欲しい。

AC長野パルセイロロアッソ熊本
スターティング
21立川 小太郎GKGK山本 海人22
20吉村 弦DFDF黒木 晃平2
26遠藤 元一DFDF小笠原 佳祐3
30浦上 仁騎DFDF鈴木 翔登39
2松原 優吉DFDF片山 奨典7
6岩沼 俊介MFMF高瀬 優孝24
17明神 智和MFMF岡本 知剛31
11木村 裕MFMF田辺 圭佑25
19三上 陽輔MFMF中原 輝14
14東 浩史MFFW佐野 翼17
39齋藤 恵太FWFW原 一樹9
交代
58分 ▼明神 智和 △津田 知宏
63分 ▼片山 奨典 △伊東 俊
68分 ▼齋藤 恵太 △大城 佑斗
76分 ▼中原 輝 △田村 翔太
83分 ▼吉村 弦 △有永 一生
87分 ▼高瀬 優孝 △北村 知也
リザーブ
31リュウ ヌグラハGKGK畑 実1
3大島 嵩弘DFDF酒井 崇一4
22國領 一平MFDF小谷 祐喜23
25有永 一生MFMF伊東 俊10
9津田 知宏FWMF田村 翔太16
23大城 佑斗FWMF中山 雄登27
27竹下 玲王FWFW北村 知也13
得点
90分+1 大城 佑斗 
入場者数:4,133人

明神選手の引退のコメント(長野パルセイロHPより)
「今シーズンをもって現役を引退することを決意しました。
 チームからは来年も選手契約のお話をいただいたのですが、プロサッカー選手として求められるものに応えられないと感じ、引退という決断に至りました。最後までチームの一員として戦いたい気持ちが強く、発表をシーズン終了後にしようと思っていました。一方で、24年間を振り返る中で、関係者やファン・サポーターの皆様には前もってお知らせするべきではないかとも考え、最後まで悩みましたがこのタイミングでの発表とさせていただきました。
 AC長野パルセイロをJ2に上げる。そのことだけを考えてプレーしてきましたが、達成することができず本当に申し訳ない気持ちです。J2に上がり、違う景色を皆様と見たかったです。ただ3年間、AC長野パルセイロのユニホームを着て、AC長野パルセイロのエンブレムのために戦い、長野Uスタジアムでプレーできたことはとても幸せでした。バスでスタジアム入りする時に聞くチャントが特に大好きでした。この3年間で出会い、お世話になったすべての皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
 この場を借りて、今までお世話になった柏レイソル、ガンバ大阪、名古屋グランパスの関係者の皆様にも心より感謝申し上げます。各クラブでキックオフの笛から試合終了の笛が鳴るまで全力でピッチを走りまわり、プレーできたことは僕の誇りであり財産です。
 24年の選手生活、たくさんの出会いに恵まれ、多くの方々に支えられてここまで現役を続けることが出来ました。本当にありがとうございました。 明神智和 」

 トルシエ監督に「完璧なチームとは8人の明神と3人のクレイジーな選手で構成される」的な発言をさせた明神選手だが、私には日本代表としてもJ1で活躍していたころの明神選手にあんまり印象はない。ガンバの遠藤選手などのコメントを見ると、守備面でどちらかというと黒子的にチームを支えた選手なんだとよくわかった。パルセイロでのプレーを見ると、とにかくボールを受けると1タッチか2タッチでパスを回していく、周りがよく見えていて、判断が非常に早い点は、やっぱり違うなあって思えた。ただ、今日の試合でもボールを奪われることがあって、これが限界を感じたんだろうなという風に思えた。他のJ3選手ならありがちなことが、超一流選手には許せなかったのだろうと思う。

新井選手の引退のコメント(長野パルセイロHPより)
「今シーズン限りで引退することを決断いたしました。
 まずは小学生から始めたサッカーでここまで成長させていただいた下結城小学校、八千代SS、アズーFC(現FC古河)、つくば開成高校、日本体育大学、ギラヴァンツ北九州、AC長野パルセイロのすべての指導者の方や先生方、選手たち、クラブスタッフや関係者の皆様、応援してくださったファン・サポーターの皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。
 僕のサッカー人生は、一度サッカーから完全に離れた時間もありました。4度の膝の手術で辛い経験もしました。特に昨シーズンの怪我では復帰まで1年半の時間がかかり、本当にしんどかった。それでも、またピッチに戻って来れたのは本当にたくさんの方の力で支えられてきたからこそです。短いサッカー人生でしたが、これまで出会った方々に支えられて来なかったら、ここまで必死にがんばって来れなかったと思います。本当にありがとうございました。
 そしてなにより、プロになるという夢を叶えさせてくれた両親、どんな時もそばで支えてくれた妻には“ありがとう”と“お疲れ様”という感謝の気持ちでいっぱいです。
 これまでたくさんのご声援をいただき、本当にありがとうございました。ラスト1試合、最後まで皆様と共に戦いたいと思います。
 これからもAC長野パルセイロの熱い応援をよろしくお願いします」

 新井選手の今年の復帰戦のコメントが素晴らしかった。この言葉で大好きな選手になった。その後、Jリーグ初ゴールを決めてスタメンを張り続けたのに、11月24日の岩手戦の終了間際に、相手選手と接触した後に膝が変な方向に曲がり、「あっヤバイ」と思っていたが、それで引退になってしまった。これから応援したい選手だったのに、とても残念。選手生活は終わったけれども、これからの人生に幸多からんことを祈りたい。

宇野沢選手の退団のコメント(長野パルセイロHPより)
「10年もの長い間、たくさんの温かい応援、サポートをいただきありがとうございました。
 地域リーグからJFLへの昇格、JFL優勝、J3リーグ参入、J2チームとの入れ替え戦、天皇杯など、たくさんの歓喜と興奮、悔恨を、チームそして皆様と共に経験できてとても幸せでした。その中で出会ったたくさんの仲間は私の人生にとって、とてつもなく大きな財産です。
 志半ばでチームを去って行った仲間の気持ち。ここ数年のサポーターの無念。それらも背負って、今年こそは、と目指していたJ2昇格という目標を果たせず、非常に残念で申し訳ない気持ちです。
 良い時も悪いときも応援していただき本当に感謝しています。ありがとうございました。
 これからのAC長野パルセイロが長野にとって一層欠かせない存在となり、ファン・サポーターの皆様、地域の皆様、スポンサー企業の皆様に愛され、ますます発展していくことを心から願っています。
 私自身、これから先の事はまだ決めていません。
『いいことばかりでは無いさ でも次の扉をノックしよう もっと素晴らしいはずの自分を探して』
 大好きな歌詞にあるように、次に向かって前向きに進んでいきたいと思いますので、これまでと変わらず応援していただけると幸いです」

 長野に引っ越してきて、初めてJFLで闘うパルセイロの試合を見た時、この選手はちょっと違うなあと思った。それからずっと注目してきたが、十字靭帯を損傷してからは、かつての輝きを完全に取り戻すことはできず、また、調子が出てくると怪我で戦列を離れるという不運も続いた。ガンガンゴールを決めるところを再び見たかったが、残念でならない。私をはじめ10番のユニホームを着て応援するサポーターは今年も多くいた。ここ2、3年ミスターパルセイロもそろそろ引退かと思ってきたが、まだ引退の表明はない。来年もぜひ頑張って欲しい。