ほのぼのと「流星の絆」

 2008年、講談社より刊行された東野圭吾の「流星の絆」を読んだ。

■ストーリー
 幼い頃に両親を殺害された3兄妹が、14年の歳月を経て、時効目前に犯人を突き止める。
 親しい親戚もない家族、小学生の頃に両親を亡くしたため、3兄妹は、施設で少年時代を過ごすことになった。社会人になるとやや屈折した生い立ちのためか、3人の連携プレーで詐欺を働くようになる。そして、詐欺のターゲットの中に、犯人とおぼしき人物の影を見る。その犯人を確実に有罪とするために、3人が策を労する。意外な協力者も得て、犯人を追いつめたかのように見えたのだが……。

■書評
 最後にちゃんとどんでん返しは、設けられているものの、読み始めは退屈な感じが強かった。話はこんな風に進むんだろうな、と、いう方向が見え、その通りに進むかに思えたからだ。かなり終盤までそう思えた。ただ、ストーリーにはどんどん引き込まれて行き退屈はしない。
 3人兄弟が、独自に真犯人を突き止めようとするストーリー展開は、推理小説として十分なおもしろさを持っている。でも、どんどんと進化を遂げる東野作品として、今一歩もの足りない。単なるミステリー作品にとどまってしまっている。
 その中で強いて上げるとすれば、「絆」なのかもしれない。テレビドラマにしたらはまりそうな、3兄弟の絆だ。3.11の大震災でその力があらためて際立った「絆」を先取りしているのかも知れない。ただ、テーマとしてはありきたりな気がするのだが。

私のおすすめ度:★★★☆☆